There Will Never Be Another You コード進行 解析&セッションガイド

博士、今日はThere Will Never Be Another Youだよ。セッションでめちゃくちゃよく聞く曲だけど、意外とちゃんと分析したことなかったんだよね

おお、いい曲を持ってきたのう。1942年のミュージカル映画のために書かれた曲じゃが、ジャズの基本が詰まっておって「最初に覚えるスタンダード」としてよく勧められる曲なのじゃ

難易度低めって聞いてたけど、実際どうなの?

見た目はシンプルじゃが、中身はなかなか奥深いぞい。今日はその話をしていくとするかのう
曲の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 曲名 | There Will Never Be Another You(ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー) |
| 作曲 | Harry Warren(1942) |
| 作詞 | Mack Gordon |
| キー | Eb |
| フォーム | ABAC / 32小節 |
| テンポ | ♩=140〜220 |
| フィール | Medium Up Swing |
| セッション頻出度 | ★★★★☆ |
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
1942年のミュージカル映画『Iceland』のために書かれた曲です。コード進行にジャズの基本的な動き(マイナーII-V、セカンダリードミナント、II-V-I)が一通り詰まっていて、「最初に覚えるスタンダード」として勧められることが多いです。
セッションでもかなりの頻度でコールされます。

キーはEbなんだよね?

メインはEbメジャーじゃが、実はそれだけでは語れんのじゃ。この曲はEbメジャー・Cマイナー・Abメジャーという3つのキーセンターを行き来する構造になっておるんじゃよ。Dm7(b5)→G7(b9)→Cm7はCマイナーへのII-V-I、Bbm7→Eb7→Abmaj7はAbメジャーへのII-V-Iなのじゃ。この転調感覚を意識するかどうかでソロの自由度が変わるぞい
同じくキーセンターの切り替えが重要な曲としてAutumn Leavesがあります。
There Will Never Be Another You のコード進行と分析

ABAC・32小節のフォームです。AセクションとB/Cセクションがそれぞれ8小節ずつ。BとCは前半4小節が同じで後半だけ違うので、覚える量は見た目ほど多くありません。
- Dm7(b5) → G7(b9) → Cm7 はCマイナーへのII-V-I。Aセクションの3〜6小節目で登場します。ここはEbメジャーの枠内ではなく、Cマイナーという独立したキーセンター として捉えるのが正確です。G7のb9(Ab)がCマイナーへの解決感を作っていて、この進行の間はCマイナーの世界にいます。この曲で最初に意識すべきポイントです。

博士、ここってキーがEbなのにいきなりCマイナーに行っちゃうの?

そうじゃのう。Ebメジャーのスケールのまま弾いてもそこまで破綻はせんが、Cマイナーとして意識するとソロの方向性がはっきりするんじゃよ。G7のb9がCマイナーへの解決を強く引っ張っておるからのう
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Bbm7 → Eb7 → Abmaj7 はIV方向(サブドミナント方向)への II-V-I。曲のキーがEbなのにEb7が出てくるのが面白いところで、ここは 一時的にAbメジャーに転調 しています。Bbm7がAbメジャーのIIm7、Eb7がV7、そしてAbmaj7がImaj7という完全なII-V-Iです。EbメジャーのIVであるAbに向かう動きなので「IV方向への転調」と捉えるのが正確です(bVII方向ではありません)。つまりこの曲はEbメジャー→Cマイナー→Abメジャーと、3つのキーセンターを行き来する構造になっています。
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Db7(#11) の解釈は人によって割れます。裏コードとしてCm7に向かう動きとも、サブドミナント系の色付けとも取れます。正直ここは自分もまだ理論的に整理しきれていませんが、演奏上はDbリディアンb7で弾いておけば問題ありません。

Db7(#11)って何者なの?どこに向かってるかよくわからないんだけど

正直なところ、ここは理論家の間でも意見が割れるところなんじゃ。裏コードとしてCm7に向かう動きとも取れるし、サブドミナント系の色付けとも取れる。お前さんが演奏するときはDbリディアンb7で弾いておけば問題ないぞい

とりあえずリディアンb7で乗り切ればいいんだね。了解!
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BセクションのF7(2小節)に注意。Bb7に対するセカンダリードミナント(V7/V)です。F7 → Fm7 → Bb7 の流れは「ドミナントがマイナーに戻ってからII-V」という動きなので、F7の2小節間だけ少し色が変わります。
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CセクションはBセクションの後半が書き換わる。3小節目以降、2拍ずつコードが切り替わる畳みかけの進行になります。Am7(b5) → D7 はGマイナーへのII-Vにも見えますが、Gmに解決せずEbmaj7に戻ります。Gm7→C7→Fm7→Bb7の流れ全体がIII-VI-II-V的なターンアラウンドの一部と捉えると、Gmに解決しないのも自然です。テンポが速いとここが忙しくなりますが、大きな流れとしてはFm7 → Bb7 → Eb6 の最終II-V-Iに流れ込んでいるだけです。このIII-VI-II-VのターンアラウンドパターンはAll The Things You Areのエンディングにも登場します。

Cセクション後半、2拍刻みでコードが変わるのキツくない?テンポ速いと追いきれないよ…

そうじゃのう、ここが一番忙しいところなのじゃ。じゃが大きな流れとしてはFm7→Bb7→Eb6の最終II-V-Iに流れ込んでいるだけなのじゃ。途中の経過コードを全部追えなくても、着地点さえ見失わなければ大丈夫じゃぞい
There Will Never Be Another You のスケールガイド

博士、キーセンターが3つもあるって聞いたけど、スケールも3つ覚えなきゃダメ?

そう身構えんでいいぞい。まずは「3つのキーセンターをざっくり追う」ところから始めるのじゃ
まずはこれだけ覚える

コードごとにスケール切り替えるのって、テンポ速いとキツいよね?

180以上だとかなり厳しいのう。最初は大きく3つのキーセンターで捉えるのが現実的じゃのう

3つのキーセンター、具体的にどこで切り替えるの?

まずメインはEbメジャーなのじゃ。Ebmaj7やFm7、Bb7のあたりはEbイオニアン、つまりEbメジャースケールで弾ける。これが曲の大部分を占めておるぞい

それはわかる。問題はマイナーII-Vのところだよね

Dm7(b5)→G7(b9)→Cm7のところじゃな。ここはCハーモニックマイナーで通すのが一番シンプルなのじゃ。Cドリアンでもいけるが、ハーモニックマイナーのB(ナチュラル)がG7のメジャー3rdになって、Cmへの解決感が強く出るんじゃよ

BナチュラルがCの半音下だから、リーディングトーンになるってこと?

そのとおりじゃ!お前さん、よくわかっておるのう。そのBナチュラルがCmのルートに半音で解決する感覚を耳で覚えるのが一番早いぞい

で、3つ目のAbメジャーは?

Bbm7→Eb7→Abmaj7のところじゃな。ここはAbイオニアン、つまりAbメジャースケールなのじゃ。じつはのう、AbメジャーはEbメジャーと構成音がほぼ同じで、Dbが加わるだけなんじゃ。だから耳で聴くとそこまで大きな変化は感じないはずじゃぞい

え、ほぼ同じ音なの?それなら気が楽だなあ

ただし、Bbm7→Eb7の区間をAbメジャーとして意識すると、ソロのフレーズの方向性――Abに解決する感覚――がはっきりするから、意識はしておいた方がいいぞい。この3つのキーセンターの切り替えを意識するだけで、曲全体の見通しがかなり良くなるんじゃ
余裕が出たらコードごとに

3つのキーセンターで通せるようになったら、次はコードごとに見ていく感じ?

そうじゃのう。まずはEbメジャー系のコードからいくぞい
Ebメジャー系(Ebmaj7, Fm7, Bb7)


Ebmaj7はイオニアンでいいんだよね?リディアンも使える?

リディアンも使えるが、A(ナチュラル)がメロディとぶつかる箇所があるからのう。慣れるまではイオニアンが安全じゃぞい。Fm7はFドリアンでEbmaj7への橋渡しになるし、Bb7はBbミクソリディアンで素直にいけるぞい

このあたりは全部Ebメジャーの延長って感じだね
Cマイナー系(Dm7(b5)→G7(b9)→Cm7)


次はCマイナー系だね。Dm7(b5)→G7(b9)→Cm7

うむ。Dm7(b5)はDロクリアンじゃが、Eb(b9)がルートDの半音上で不協和が強いからのう。長く伸ばさず経過音として使うのが無難じゃぞい

G7(b9)は?

Gコンディミがおすすめじゃのう。b9のAbを意識するとCmへの解決感がぐっと出るぞい。Gオルタードも定番じゃのう

Cm7はCドリアンとCエオリアン、どっちがいいの?

違いは6度がAかAbかだけなのじゃ。ドリアンの方がジャズっぽい響きになるから、ワシはドリアン派じゃのう。好みで選んでかまわんぞい

博士がドリアン派なら僕もドリアンにしようかな
Abメジャー系(Bbm7→Eb7→Abmaj7)


Abメジャー系はどう?さっき「Ebとほぼ同じ音」って言ってたけど

そうじゃのう。Bbm7はBbドリアン、Eb7はEbミクソリディアン、Abmaj7はAbリディアンが理論上の第一候補じゃが、Abイオニアンでも問題ないぞい

ほれ、EbメジャーとAbメジャーは構成音がほぼ同じじゃろう?Dbが入るかどうかの違いだけなのじゃ。だから指の動きもそんなに変わらんはずじゃぞい

確かに。3つのキーセンターって聞くと大変そうだけど、2つはほぼ同じなら実質2つみたいなもんだね
特殊コード(Db7(#11), Gm7)


最後に特殊なやつ。Db7(#11)とGm7はどうすれば?

Db7(#11)はDbリディアンb7なのじゃ。#11が指定されておるからリディアンb7が自然じゃのう。Gm7はちょっと厄介でのう

厄介?ドリアンじゃダメなの?

EbメジャーのIIIm7として捉えるとGフリジアンが理論上の第一候補なんじゃ。フリジアンはb2のAbが入って暗い響きが出る。じゃがテンポが速い場合はドリアンの方が扱いやすいから、お前さんの今のレベルならドリアンで十分じゃぞい。あとF7はFミクソリディアンで素直にいけるぞい

結局、全部いっぺんに覚えなくていいんだよね?

当然じゃぞい。まずは3キーセンターで通す。その上で気になるコードだけ少しずつ深掘りしていけばいいんじゃ。焦ることはないぞい
演奏時のポイント
イントロ: ラスト4小節(Fm7 → Bb7 → Eb6)をそのままイントロにするのが一番多いパターンです。ピアノやギターがこの進行を弾いて、Ebmaj7(テーマ頭)に入ります。
テンポ: セッションでは♩=160〜180あたりが多い印象です。初心者枠だと150前後に落としてくれることもあります。200を超えるとCセクション後半がかなり忙しくなるので、まずは160くらいから練習するのがおすすめです。
アウトロ: Fm7 → Bb7 → Ebmaj7のリピートで自然に収束させていきます。打ち合わせなしで始まることが多いので、テンポが落ち始めたらそれに合わせます。

セッションでいきなりコールされたらイントロどうすればいい?

ラスト4小節のFm7→Bb7→Eb6をそのまま弾けばいいんじゃ。この曲はイントロで迷うことがほとんどない、初心者に優しい曲じゃぞい
実践で使えるTips
ソロの回し方: 32小節で1コーラスずつが基本です。Cセクション後半(2拍刻みの部分)に来たら「もう1周するか、ここで終わるか」を判断して、終わるならフレーズをシンプルにしていきます。
コール方法: 「There Will Never Be Another You」で通じますが、長いので「ネバー」だけで呼ばれることもあります。キーはほぼEb固定なので言わなくても通じますが、「Ebで」と添えると丁寧です。
Cセクション後半を重点練習する: ここだけがBと違う部分です。2拍刻みでコードが変わりますが、まずはFm7 → Bb7 → Eb6 の最終着地だけ確実に捉えて、途中の経過コードは徐々に拾っていけば十分です。

Cセクション後半の練習法って何かある?テンポ落としてやるしかないのかな

まずはテンポを落として、Am7(b5)→D7→Gm7→C7→Fm7→Bb7を2拍ずつ声に出してみるのが効果的じゃのう。コード名を口で言えるようになったら、次は各コードのルートだけを楽器で弾いてみる。それができたらガイドトーン(3度と7度)を追う。段階を踏めばテンポが上がっても見失わなくなるぞい

ルートだけでもまず弾けるようにするのが大事なんだね
BとCの見分け方: 前半4小節は同じ(Abmaj7 → Db7#11 → Ebmaj7 → …)なので混同しやすいです。Bは「F7が2小節」、Cは「2拍刻みで畳みかける」と覚えておくと見失いません。
名演・参考音源
Chet Baker — Chet Baker Sings (1954)
ボーカルとトランペットの両方を聴けます。テンポもミディアムで、メロディの歌い方を掴むのに最適です。
Sonny Rollins — Newk’s Time (1957)
テナーサックスのワンホーンカルテット。ソロの組み立て方がシンプルで、コードに沿ったフレーズの作り方の参考になります。
Ella Fitzgerald — Ella in Berlin (1960)
ライブ録音で、ボーカルジャズとしての完成形です。歌モノセッションに参加するなら一度聴いておくといいです。

Chet Bakerの歌、めちゃくちゃいいよね。トランペットも歌も両方聴けるのが贅沢

Chet Bakerは歌心のある演奏の手本じゃのう。Sonny Rollinsのソロも構成が明快で、コード進行に沿ったフレーズ作りの教材としては最高じゃぞい
関連曲ガイド
この曲のコード進行を理解できたら、次のスタンダードにも挑戦してみてください。
- Autumn Leaves(枯葉) : マイナーII-V-Iとメジャー II-V-Iの両方が登場する定番曲。キーセンターの切り替えを練習するなら最初に取り組みたい1曲です。
- All The Things You Are : 4つのキーセンターを渡り歩く構造で、There Will Never Be Another Youの「3キーセンター」をさらに発展させた難易度。II-V-Iの連鎖パターンを深掘りしたい人におすすめです。
まとめ

この曲、「簡単」って言われるけど、3つのキーセンターがあったり、Cセクション後半の2拍刻みがあったり、ちゃんと分析すると結構奥深いんだね

そうじゃのう。じゃが裏を返せば、ABAC・32小節の中にジャズの基本がぎゅっと詰まっておるということなのじゃ。この曲を丁寧にやれば、他のスタンダードにも応用が効くぞい

まずはAセクション暗記して、Cセクション後半だけ別で練習すればセッションに持っていけそう?

十分じゃぞい。焦らず一歩ずつやっていけばいいんじゃぞい。お前さんなら大丈夫じゃぞい
There Will Never Be Another Youは、ABAC・32小節の中にEbメジャー・Cマイナー・Abメジャーの3つのキーセンターが自然に織り込まれていて、覚える量のわりに学べることが多い曲です。まずはAセクションを暗記して、Cセクション後半の2拍刻みだけ別途練習すれば、セッションに持っていく準備は十分です。


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