All The Things You Are コード進行 解析|5つの転調を攻略するセッションガイド

博士!今日はAll The Things You Areだよね。セッションで超よく出るけど、転調が多くて毎回ちょっとビビるんだよね

ふぉっふぉっ、この曲はのう、ジャズの転調を学ぶにはこれ以上ない教科書なのじゃ。怖がらんでよいぞい
曲の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 曲名 | All The Things You Are(オール・ザ・シングス・ユー・アー) |
| 作曲 | Jerome Kern(作詞: Oscar Hammerstein II) |
| 発表 | 1939年 ブロードウェイミュージカル Very Warm for May |
| キー | Ab major |
| フォーム | AABA / 36小節 |
| テンポ | ♩=140〜200(Medium Up Swing) |
| セッション頻出度 | ★★★★★ |
| 難易度 | ★★★☆☆ |

1939年ってことは、もう80年以上前の曲じゃない?元はブロードウェイのミュージカルナンバーなんだ

そうじゃのう。元はミュージカル *Very Warm for May* のために書かれた曲じゃが、コード進行があまりに美しくてのう。ジャズミュージシャンがこぞって取り上げて、セッションの大定番になったのじゃ。5つのキーセンターを通過するうえに36小節の変則構成。これが全部ii-V-Iの連鎖でできとるんじゃから、練習素材としてもこれ以上のものはないぞい
セッションで「何やる?」となったとき、Autumn Leavesと並んでかなりの確率で名前が出る曲です。1939年にブロードウェイ向けに書かれましたが、コード進行の美しさからジャズミュージシャンに愛され続けています。
この曲が重宝される理由は二つあります。一つは、フォーム内で5つのキーセンター(Ab→C→Eb→G→E→Ab)を通過すること。ii-V-Iの練習素材としてこれ以上のものはありません。
もう一つは36小節という変則構成で、最後のAセクションが12小節に拡張されている点です。32小節と思い込んでいると周りとズレるので、事前に把握しておく必要があります。
All The Things You Areのコード進行と分析

曲の骨格は「ii-V-Iが次々とキーを変えて現れる」構造です。全体を通して押さえておきたいポイントをまとめます。
- Ab→C→Eb→Gと3度関係で転調する(Ab→Cは長3度、C→Ebは短3度、Eb→Gも長3度)。A1セクション6小節目でDm7-G7が唐突に現れてCメジャーに着地します。A2も同じ仕掛けでEbからGへ。
この3度関係の連鎖がこの曲の設計の美しさです。

3度関係で転調って、聴いてると自然に聞こえるのに楽譜見ると結構飛んでるよね

そこがJerome Kernの巧みなところじゃのう。ii-Vという「接着剤」を挟むことで、遠い調にもスルッと連れて行かれるのじゃ
- ブリッジでEメジャーという遠い調に飛ぶ。F#m7(b5)-B7(b9)-Emaj7はAbキーから見るとかなり離れた場所です。ここが曲のクライマックスで、最後のC7(b13)で一気にAbのFm7に戻ります。

このブリッジのEメジャー、Abから見ると増5度の関係なのじゃ。一番遠い調に飛ぶからこそ、戻ってきたときの解放感が格別なのじゃよ
- A3セクションは12小節ある。ここが最大の落とし穴です。29小節目以降にDbmaj7→Dbm(maj7)→Cm7→Bdim7→Bbm7という半音下行のクリシェラインが出てきます。セッションでロストする人の大半がこの「タグ」部分です。

A3の12小節、ここだけ他より4小節長いんだよね?

そうじゃのう。32小節だと思い込んでいると、この4小節分ズレて周りと合わなくなるぞい。ここだけは事前に叩き込んでおくんじゃぞい。ロストする原因の9割がここじゃからのう
- ターンバックはGm7(b5)-C7(b9)。最終小節のこの進行で頭のFm7に戻します。
All The Things You Areのスケールガイド

博士、この曲5回も転調するんでしょ?スケール何個覚えればいいの…無理じゃない?

まあまあ、泣くでないぞい。コードごとにスケールを切り替えるのではなくて、5つのキーセンターを追いかけるだけでええのじゃ
まずはこれだけ覚える

5つのキーセンターを追う、って具体的にはどうすればいいの?

簡単なのじゃ。「今どのキーにいるか」を把握して、そのキーのメジャースケール一発で乗り切るのじゃ。最初からコードごとにスケールを切り替えようとすると頭がパンクするぞい

メジャースケール一発でいいの?それだけでちゃんと聴こえる?

十分聴こえるぞい。切り替えポイントを教えてやるからのう。まずA1セクション前半はAbメジャースケールで通すのじゃ

A1はAbね。で、6小節目のDm7-G7-Cmaj7に来たら?

そこでCメジャースケールに切り替えるのじゃ。ちなみにG7は理論的にはリディアンb7が第一候補なんじゃが、Cメジャーへ解決する流れで聴いとるならCメジャースケールで通して実用上は問題ないぞい

なるほど。A2セクションはEbメジャーでいいの?

そうじゃのう。A2前半はEbメジャースケール。そしてAm7-D7-Gmaj7が来たらGメジャースケールに切り替えなのじゃ。D7もG7と同じでリディアンb7が理論上の候補じゃが、Gメジャーで通すのが実践的じゃのう

最後のブリッジ後半は?F#m7(b5)-B7(b9)-Emaj7のところ

そこはEメジャースケールで通すのじゃ。つまり全部並べるとAb→C→Eb→G→E、この5つのキーを追いかけるだけじゃぞい

Ab→C→Eb→G→Eか。こうやって並べると、追いかけるだけならなんとかなりそう!

そうじゃろう?余裕が出てきたら、ドミナント7thのスケールだけちょっと工夫してみるとよいぞい。じゃがまずはキーセンターを身体に入れることが先決じゃぞい。この「キーセンターを追う」やり方は[There Will Never Be Another You](/there-will-never-be-another-you-analysis/)みたいな転調がある曲にもそのまま応用できるからのう
余裕が出たらコードごとに
A1/A2セクション:Abメジャー系(Fm7〜Dbmaj7)


キーセンターが追えるようになったんだけど、次はコードごとにスケール変えてみたいんだよね

よしよし、やる気があるのう。まずはAb系のコード群からいくぞい。Fm7、Bbm7→Eb7→Abmaj7、それからDbmaj7。この辺りはAbメジャースケールの延長で弾けるから入りやすいのじゃ

Fm7はAbキーのviだから、そのままAbメジャーの音で弾ける感じ?

その通りじゃのう。Fエオリアンということになるのう。Fドリアンに切り替えるとD音が入って少し明るくなるから、慣れたら試してみるとよいぞい。Bbm7→Eb7→Abmaj7はBbドリアン→Ebミクソリディアン→Abイオニアンじゃが、ii-V-Iじゃから全部Abメジャーの音で統一しても問題ないのじゃ

Dbmaj7は?

DbリディアンでG音、つまり#4を使うと浮遊感が出るぞい。じゃがDbイオニアンでも全然OKじゃぞい。ここまではAbメジャーの延長線上じゃから、そこまで身構えんでよい
ブリッジ:Eメジャーへの転調(F#m7(b5)〜Emaj7)


ここまでは馴染みやすいね。次はブリッジ?一番遠い調に飛ぶところだよね

そうじゃのう。F#m7(b5)-B7(b9)-Emaj7でEメジャーに飛ぶところじゃのう。F#m7(b5)はF#ロクリアンが基本じゃが、正直ワシもここはスケール選びに毎回迷うぞい。ロクリアン#2を試すこともあるんじゃが、テンポが速いとEメジャースケールで通す方が安定するのじゃ

B7(b9)はどうすればいい?

理論的にはBリディアンb7が第一候補で、Bオルタードが代替なのじゃ。AbキーからEキーへの転調という文脈ではリディアンb7が適合するんじゃが、実際の演奏ではオルタードで吹く人も多いのう。慣れないうちはEメジャースケールにb9のC音を足す程度でも形になるぞい

で、C7(b13)が来たらAbのFm7に戻るんだよね。ここが帰り道の入り口か

その通りじゃのう。C7(b13)はCオルタードで、b13のAb音が次のFm7への解決を滑らかにしてくれるのじゃ。ここでAbのドミナントとして機能して、一気にホームキーに引き戻す。この「一番遠い調に行って帰ってくる」感覚がこの曲の醍醐味じゃのう
A3セクション:半音下行ライン(Dbm(maj7)〜Bdim7)


ブリッジ抜けたらあとはAbに帰るだけだよね?

ほぼそうなんじゃが、A3のDbm(maj7)→Cm7→Bdim7の半音下行ラインだけは要注意じゃぞい。理論的にはそれぞれ別のスケールなんじゃが、テンポが速いとそこまで考える余裕はないのじゃ

この半音下行のところ、テンポ速いとスケールとか考えてる余裕ないんだけど…

正直ワシもテンポが速いと考えとらんぞい。Abメジャースケールをベースに、ルートの動きに合わせてフレーズを半音ずつ下げるイメージで十分じゃぞい。無理に理論で固めようとせんでよい

博士でもそうなんだ。ちょっと安心した

テンポ200超えたら誰でもそうじゃよ。大事なのは迷子にならんことじゃぞい。理論的な正確さは余裕ができてからで十分じゃぞい
演奏時のポイント
イントロ: ラスト4小節(Bbm7→Eb7→Abmaj7)を使うのが最も一般的です。ピアニストが弾き始めたらそれに合わせて入ります。
Charlie Parkerの有名なピックアップ(Emaj7からの4音のモチーフ)を引用する人もいますが、これは中上級者向けです。
テンポ: セッションでは♩=160前後で演奏されることが多い印象です。初心者セッションだと140くらいに落としてくれることもあります。
200を超えるとかなり大変なので、まずは140で通せるようにするのが先決です。
アウトロ: Bbm7→Eb7→Abmaj7を2〜3回リピートして、徐々にテンポを落として着地します。最後のAbmaj7をAbmaj7(#11)にするとモダンな響きになります。

イントロでParkerのピックアップやってる人見ると「おっ」ってなるよね

かっこいいがのう、あれは周りとの呼吸が合ってないと事故るぞい。まずはラスト4小節のイントロを確実にできるようにするのが先じゃぞい
実践で使えるTips
ソロの回し方: 36小節と長めなので、1〜2コーラスずつ回すのが一般的です。36小節あると終わりのタイミングが伝わりにくいので、A3に入ったら意識的に音数を減らして「終わります」のサインを出すのがポイントです。A3の12小節を意識しておかないと、受け渡しのタイミングがズレます。
転調で迷子にならないために: 各セクションの頭でキーを意識する癖をつけます。「A1はAb、6小節目からC」「A2はEb、6小節目からG」「ブリッジはG、5小節目からE」。この3パターンを身体に入れておくだけで、かなり見通しが良くなります。
自分も最初はブリッジで毎回迷子でしたが、キーセンターを追いかける練習をしてからだいぶ楽になりました。
コール方法: 「All The Things、Abで、ミディアムアップで」と言えば通じます。略して「オールザ」と呼ぶ人もいます。キーはAbが標準で、他のキーで演奏されることはまずありません。

36小節って、ソロ回してるときに「あれ、今どこ?」ってなりがちだよね

じゃから、A3に入ったら音数を減らして「そろそろ終わりますよ」と周りに伝えるのじゃ。これができるだけでセッションの印象がだいぶ変わるぞい
名演・参考音源
Charlie Parker — The Complete Dial Sessions (1947)
有名なイントロのピックアップ(Emaj7→C7のライン)はこのバージョンが起源です。テーマ前の4音のモチーフはセッションでもよく引用されます。バップのフレーズ構築の手本として最高の演奏です。
Sonny Rollins — Sonny Rollins with the Modern Jazz Quartet (1953)
テナーの太い音で各キーセンターをはっきりと吹き分けているのがわかりやすく、転調ポイントの処理を耳で学べます。ブリッジのEメジャーに入る瞬間のフレーズの切り替え方が特に参考になります。
Keith Jarrett Trio — Still Live (1986)
かなりアップテンポでスリリングな演奏です。速いテンポの中でどうフレージングするか、リハモをどう仕掛けるかの参考になります。中級者以降におすすめです。
Ella Fitzgerald — Sings the Jerome Kern Songbook (1963)
ヴォーカルバージョンの決定盤です。メロディの正確な歌い方を確認したいときに重宝します。歌モノセッションに参加する方はぜひ。

Parker聴くと、ブリッジのEメジャーのところでフレーズがガラッと変わるのがわかるよね。あのピックアップいつか自分もやってみたいな

まずはRollinsを聴いてキーセンターの切り替え方を耳で覚えるのがよいぞい。Parkerのピックアップはその後でも遅くないのじゃ
関連曲ガイド
All The Things You Areが弾けるようになったら、次のステップとしておすすめの曲を紹介します。
- Autumn Leaves — ii-V-Iの練習曲としてはこちらが入門編。転調がない分シンプルなので、All The Things You Areの前に取り組んでおくと基礎が固まります。まだの方はぜひ先にチェックしてください。
- There Will Never Be Another You — 32小節AABA、キーはEbで転調も控えめですが、ii-V-Iの処理とリズムチェンジ的な要素が入ってきます。All The Things You Areで鍛えた転調対応力を別の文脈で試すのに最適です。
まとめ

この曲、転調多くてビビってたけど、キーセンター5つ追うだけでいいって思ったらだいぶ気が楽になった

そうじゃろう?中身はii-V-Iの連鎖じゃからのう。「今どのキーにいるか」を追いかける意識を持つだけで見通しがぐっと良くなるのじゃ
All The Things You Areは転調の多さから一見難しそうに見えますが、中身はii-V-Iの連鎖です。「今どのキーにいるか」を追いかける意識を持つだけで見通しが良くなります。A3セクションの12小節(特に半音下行ライン)を事前に叩き込んでおくのが、セッションで迷子にならない一番の近道です。

A3の12小節だけはどうか忘れんでくれぞい。お前さんなら大丈夫じゃ、頑張ってくるのじゃぞい


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