Misty コード進行 解析&セッションガイド

博士〜!今度のセッションでバラードやりたいんだけど、Mistyってどう?

おお、Mistyか!ジャズバラードの大定番じゃぞい。ボーカルセッションでもインストでも、とにかくよく演奏される曲でのう

そんなに有名なんだ!

Erroll Garnerが1954年に書いた曲で、飛行機の中でメロディが浮かんだという逸話があるんじゃのう。楽譜の読み書きができなかったGarnerが、着陸後に急いでピアノに向かって弾いたというから驚きじゃぞい
Misty の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 曲名 | Misty(ミスティ) |
| 作曲 | Erroll Garner (1954) |
| キー | Eb |
| フォーム | AABA / 32小節 |
| テンポ | ♩=60–80 |
| フィール | Ballad |
| セッション頻出度 | ★★★★★ |
| 難易度 | ★★☆☆☆ |

Johnny Burkeが翌年に歌詞をつけて、1959年にJohnny Mathisがヒットさせてからボーカル曲としても定着したんじゃのう。Clint Eastwoodの映画『Play Misty For Me』(1971)でも有名になったぞい

ボーカルの人もよくやる曲なんだね

そうなのじゃ。ボーカルセッションではキーをAbやBbに変えることが多いから、そこは注意じゃぞい
Misty のコード進行と分析
-
Aセクション冒頭はEbmaj7から始まる美しいメジャーキーの進行。2小節目のBbm7→Eb7はAbキーへのII-V(セカンダリードミナント)で、3小節目のAbmaj7(IVmaj7)に解決します。メジャーキーのサブドミナントに向かうこの動きが、Mistyの柔らかい響きの正体です。
-
4小節目のAbm7→Db7はサブドミナントマイナーの借用。Abメジャーを一瞬マイナーに変えてDb7で解決感を出す、いわゆるバックドア進行に近い動きです。5小節目でEbmaj7に戻るので、「IV→ivm→I」という流れになっています。

サブドミナントマイナーってなに?

IVmaj7(Abmaj7)をIVm7(Abm7)に変えること。メジャーの明るさからマイナーの切なさに一瞬変わるのが、バラードらしい表情を生むんじゃのう

あの「キュン」ってなる感じか!

まさにそれじゃぞい。この曲のコード進行の一番おいしいところでのう
-
5小節目はEbmaj7→Cm7と動いてVIm7に。ここからFm7→Bb7(IIm7→V7)というEbキーの基本的なII-V進行で、1番カッコのGm7→C7→Fm7→Bb7(ターンアラウンド)を経て頭に戻ります。2番カッコではEb6で着地します。
-
ブリッジ(Bセクション)ではBbm7→Eb7(b9)→Abmaj7と、Aセクション冒頭と似た動きから始まります。ただしEb7にb9が付くことで、解決感がより強くなっています。

ブリッジの後半が面白いんじゃぞい。Am7→D7→F7→Gm7→C7→Fm7→Bb7という流れは、全音ずつ下がるII-Vの連鎖なのじゃ

全音ずつ下がる?

Am7→D7はGキーのII-V、そこからF7を経由してGm7→C7のFキーのII-V、そしてFm7→Bb7のEbキーのII-V。G→F→Ebと全音ずつ下がりながら、最後にホームキーのEbに戻るんじゃのう
- 最後のAセクションはほぼ1番カッコと同じ進行ですが、7小節目がEb6で一度着地し、8小節目のFm7→Bb7でターンバックして頭に戻す形になっています。

バラードだからコードが1個1個ゆっくり聴こえるね

そこがバラードの醍醐味でもあり難しさでもあるんじゃのう。テンポが速い曲なら流せるコードも、バラードではごまかしが効かないぞい
Misty のスケールガイド

博士、スケールは何を使えばいい?バラードだから外したくないんだけど…

うむ、バラードは確かに1音の重みが大きいから慎重にいきたいところじゃのう

やっぱり難しいの?

いやいや、基本はEbメジャースケール1発でかなりいけるぞい。そこから少しずつ広げていけばいいのじゃ
まずはこれだけ覚える

Mistyは基本Ebメジャーキーの曲じゃから、まずはEbメジャースケール(Ebイオニアン)を軸に弾いてみるのが第一歩じゃぞい

Aセクション全部それでいけるの?

Aセクションの大部分はEbメジャースケールの中に収まるんじゃのう。ただしAbm7→Db7のところだけ、Cb(=B)の音が入るから注意じゃぞい

ブリッジは?

ブリッジの前半(Bbm7→Eb7→Abmaj7)はAbメジャースケールの世界じゃのう。後半のAm7→D7はGメジャーの響きが一瞬入るから、ここだけFナチュラルとF#の切り替えを意識するぞい

結局3つくらい覚えればいいってこと?

そうじゃのう。Ebメジャー、Abメジャー、それにブリッジ後半の一瞬のGメジャー。この3つで9割はカバーできるぞい
余裕が出たらコードごとに

もっと細かく弾き分けたい場合は?

よし、セクションごとに見ていこうかのう
Aセクション(1〜8小節):Ebメジャーキー


Ebmaj7はEbイオニアンじゃのう。バラードだからリディアンの#4(A音)を使うとおしゃれな響きになるぞい

Bbm7→Eb7のところは?

ここはAbキーへのII-Vじゃから、BbドリアンとEbミクソリディアンが基本じゃのう。Abmaj7に解決したらAbリディアンで弾くと浮遊感が出るぞい

4小節目のAbm7→Db7がちょっと怖い…

Abm7はAbドリアンじゃが、実用的にはEbメジャースケールのC音をCb(B)に下げるだけでのう。Db7はDbミクソリディアンで、こちらもCb音がポイントじゃぞい。この2拍ずつのところは、Cbの音をしっかり意識するだけでサマになるのじゃ

1音変えるだけならできそう!

5小節目からはEbmaj7→Cm7→Fm7→Bb7。ここはEbメジャースケールの世界に戻るから安心じゃぞい。Cm7ではCエオリアンかCドリアンで弾くとよりフィットするのじゃ
Bセクション(17〜24小節):II-Vの連鎖


ブリッジのAm7→D7って突然出てくるけど、何者なの?

Am7→D7はGキーのII-Vなのじゃ。Ebの曲にGの響きが入るから一瞬「おっ?」となるんじゃが、Am7はAドリアン、D7はDミクソリディアンで弾けば自然に聴こえるぞい

その後のGm7→C7は?

Gm7→C7はFキーのII-Vで、GドリアンとCミクソリディアンじゃのう。でも解決しないままFm7→Bb7(EbキーのII-V)に行くところがミソなのじゃ。解決を焦らすこの感じが、バラードの切なさを演出しているんじゃぞい

なるほど、わざと宙ぶらりんにしてるんだね

その通りじゃのう。だから無理にフレーズを解決させようとせず、流れに身を任せるのがコツじゃぞい
最後のAセクション(25〜32小節)


ラストAは基本的に最初のAセクションと同じスケール選択でいけるぞい。違うのは7-8小節目で、Eb6で一度着地してからFm7→Bb7で頭に戻すターンバックになっているところじゃのう

じゃあAセクションのスケールを覚えれば2回使えるんだね

そうじゃぞい。AABA形式のいいところは、Aを覚えれば曲の75%をカバーできることなのじゃ
演奏時のポイント
イントロ: Mistyのイントロは原曲のErroll Garner版に倣って、ルバート(テンポなし)でメロディの冒頭をピアノがソロで弾くパターンが最も多いです。バンドが入るタイミングは3〜4小節目あたりから。決まったコード進行のイントロというよりは、テーマの頭をそのまま使う形です。

ルバートってことは、テンポが自由ってこと?

そうじゃのう。ピアノやギターが自由なテンポでメロディを弾いて、途中からベースとドラムが入ってテンポが定まる。バラードの定番の始め方じゃぞい
テンポとフィール: バラードなので♩=60〜80あたり。セッションでは70前後が多い印象です。基本はストレート8thのバラードフィールですが、ソロが盛り上がるとダブルタイム(倍テンポ)に切り替わることもあります。ダブルタイムになったら♩=140くらいのスウィングフィールで弾く感覚です。
アウトロ: テーマ最後のEb6→Fm7→Bb7を繰り返してフェードアウトするか、Ebmaj9あたりの響きでリタルダンドして終わるパターンが一般的です。
実践で使えるTips
ソロの回し方: 32小節のバラードなので、ソロは1〜2コーラスが標準です。バラードは1コーラスでも十分長いので、無理に2コーラス弾かなくても大丈夫。終わりたいコーラスの最後のAセクションで音を減らしていくと、バンドも察してくれます。
バラードで迷子にならないために: テンポが遅い分、1小節が長くて「今どこ?」となりがちです。特にBセクション(ブリッジ)のII-V連鎖で迷いやすいので、Am7が聴こえたら「ブリッジ後半に入った」という目印にするのが効果的です。

バラードって遅いから簡単かと思ったけど、逆に難しい面もあるんだね

テンポが遅い分、音の選び方やニュアンスがモロに出るからのう。でもそれは裏を返せば、1音1音を大切に弾く練習になるということじゃぞい
コール方法: 「Misty」で通じます。原曲キーはEbですが、ボーカルセッションではAbやBbで演奏されることも多いので、「キーは?」と確認するのが安全です。インストセッションならEbがほぼ100%。Fly Me To The Moonと並んで、ボーカリストが好んでコールする曲の一つです。
名演・参考音源

最後に参考音源を紹介するぞい。バラードは耳で覚えることが特に大事じゃからのう
Erroll Garner — Contrasts (1954)
原曲。ピアノトリオによるインストゥルメンタルで、Garner独特のレイドバックしたタイム感が堪能できます。メロディの歌わせ方がとにかく美しいので、最初に聴くならこれです。
Sarah Vaughan — Sarah Vaughan’s Golden Hits (1958)
ボーカル版の最高峰の一つ。Vaughanの圧倒的な声量とジャズ的なフレージングで、この曲の持つドラマ性が最大限に引き出されています。ボーカルセッションで歌う人は必聴。
Ella Fitzgerald — Ella Fitzgerald Sings the Johnny Mercer Songbook
Ellaのバージョンは軽やかで温かい。Vaughan版と聴き比べると、同じ曲でも歌い手によってこれほど表情が変わるのかと驚きます。スキャットの参考にもなります。

やっぱりErroll Garnerの原曲から聴いてみる!

うむ、原曲のピアノの美しさは格別じゃぞい。そのあとボーカル版も聴いて、バラードの表現の幅を感じるのがいいぞい
関連曲ガイド
Mistyを練習したら、次はこちらの曲もチェックしてみてください。
- Fly Me To The Moon コード解析&セッションガイド — 同じくセッション超定番のメジャーキー曲。II-V-Iの基本を学べます。
- There Will Never Be Another You コード解析&セッションガイド — Ebキーのスタンダード。Mistyと同じキーなので、スケールの練習を共有できます。
まとめ

サブドミナントマイナーの借用とか、ブリッジのII-V連鎖とか、バラードなのに結構奥が深いんだね

そうじゃのう。でもコード進行自体はメジャーキーの範囲内だから、構造を理解すればそこまで怖くないはずじゃぞい

まずはEbメジャースケール1発で通して、少しずつ細かいスケールを試してみるよ!

その進め方が一番確実じゃのう。バラードはテクニックより「歌心」が大事じゃから、メロディをよく聴いてから弾くんじゃぞい

了解、まず10回聴いてからセッション行く!

よしよし…Garnerのように鼻歌で覚えるくらいがちょうどいいぞい


コメント