What Is This Thing Called Love コード進行 解析&セッションガイド

博士〜!この前セッションで「What Is This Thing Called Love」をやったんだけど、最初のコードからもう何のキーかわからなくて迷子になった…

おお、それはこの曲の「洗礼」を受けたのじゃ。キーはCメジャーなのに、曲はFマイナーのII-Vから始まるからのう。キーが掴みにくい曲の代表格じゃぞい

Cメジャーなのに最初はFマイナー!?そんなのアリなの?

それがこの曲の面白さなのじゃ。仕組みさえわかれば怖くないから、今日はじっくり解剖していくぞい
What Is This Thing Called Love の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 曲名 | What Is This Thing Called Love(ホワット・イズ・ディス・シング・コールド・ラヴ) |
| 作曲 | Cole Porter (1929) |
| キー | C |
| フォーム | AABA / 32小節 |
| テンポ | ♩=140–260 |
| フィール | Medium-Up Swing |
| セッション頻出度 | ★★★★☆ |
| 難易度 | ★★★☆☆ |

1929年にCole Porterが書いた曲でのう。[Night and Day](/night-and-day-analysis/)と同じ作曲家じゃぞい。Porterの曲はキーの重心を曖昧にする書き方が多くて、この曲はその最たる例なのじゃ

100年近く前の曲なのに、ビバップの人たちがよく演奏してるイメージある

鋭いのう。この進行を借りてTadd Dameronが「Hot House」という別のメロディを書いて、ParkerとGillespieの演奏でビバップの定番になったのじゃ。同じ進行に別メロディを乗せた曲を「コントラファクト」と呼ぶんじゃが、それだけ素材として優秀な進行ということじゃぞい
What Is This Thing Called Love のコード進行と分析

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Aセクション冒頭はGm7b5→C7b9→Fm6です。キーはCメジャーなのに、いきなりFマイナーのII-V-I(IIm7b5→V7b9→Im6)から始まります。初見でキーを見失う最大の原因はここです。Gm7b5単体を見て「Gのなにか?」と考えると迷子になります。「Fmに向かう3点セット」として覚えるのが正解です。
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Fm6はCメジャーから見るとIVm(サブドミナントマイナー)です。ホームのCから見るとFm6はIVm6で、明るいFメジャーの代わりに借りてきた「翳りのあるIV」です。この曲は「サブドミナントマイナーから始まる曲」の代表格で、この響きを覚えるとNight and Dayの冒頭など、他のPorter曲の理解も早くなります。

最初の4小節が「Fマイナーの世界」ってこと?

そうじゃぞい。1〜4小節はFmで、5〜8小節でCメジャーに帰るのじゃ。「4小節ごとに世界が切り替わる」と捉えるのがこの曲の攻略の第一歩じゃぞい
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5〜8小節目はDm7b5→G7#5→Cmaj7で、ホームのCへのII-V-Iです。ただし普通のDm7ではなくDm7b5を使うのがポイントで、CマイナーからのII-Vを借りてCメジャーに解決する「マイナー風味のII-V-I」になっています。G7も#5付きで、暗い緊張から明るいCmaj7に抜ける瞬間がこの曲最大のカタルシスです。
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ブリッジ前半はCm7→F7→Bbmaj7です。Cmaj7で解決した直後にCm7へ変わり、そのままBbメジャーへのII-V-Iで転調します。CmajorとCminorの明暗の切り替えを1小節でやるので、ここも初見殺しの区間です。
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ブリッジ後半のAb7が2小節続き、Dm7b5→G7でCへ帰還します。このAb7の解釈には諸説あります。直前のBbから見るとbVII7(バックドア的な音使い)に聴こえますし、次のDm7b5へ半音上から落ちる裏コード(subV/II)とも取れます。どちらの解釈でも、実際に吹くときは「Ab7の2小節はAbの音世界」→「Dm7b5→G7でAセクション頭のGm7b5に繋がる」という流れを掴めば十分です。

ブリッジの最後がDm7b5→G7で、Aセクションの5小節目と同じ形なんだね

よう気づいたのう。この曲は「Fmに行くII-V」と「Cに帰るII-V」の2種類が交互に出てくる構造で、ブリッジの出口もCに帰るII-Vなのじゃ。じゃがAセクション頭はまたFmのII-Vじゃから、解決した気分になった瞬間にまた突き落とされるぞい

ジェットコースターみたいな曲だなあ…

その明暗の往復こそがこの曲の魅力じゃのう。「愛って何なんじゃ?」というタイトル通りの、答えの出ない浮遊感なのじゃ
What Is This Thing Called Love のスケールガイド

博士、こんなにキーがコロコロ変わると、スケールも大変じゃない?

実は「4小節ごとのブロック」で捉えれば、意外とシンプルなのじゃ

またブロックか!

そうじゃぞい。まずは3つのキーの「色分け」から始めるのじゃ
まずはこれだけ覚える

32小節を4小節ずつのブロックで色分けするぞい。Aセクション前半(Gm7b5→C7b9→Fm6)は「Fマイナーの世界」。ここはまずFmペンタトニック一発でよいのじゃ。Aセクション後半(Dm7b5→G7#5→Cmaj7)は「Cメジャーの世界」。Cメジャースケールで着地するぞい

ブリッジは?

ブリッジ前半(Cm7→F7→Bbmaj7)は「Bbメジャーの世界」で、Bbメジャースケール一発。後半のAb7の2小節はAb7の音(Abミクソリディアン系)を鳴らして、Dm7b5→G7からはCメジャーの帰り道じゃぞい

Fm→C→Fm→C→Bb→C、って感じで色が変わっていくんだね

その通りなのじゃ。最初のうちはコード1個1個を追うより、「今どの色のブロックにいるか」を体で覚えるほうが先じゃぞい。ブロックの変わり目さえ外さなければ、多少音を外しても「曲の形」は伝わるのじゃ

まずはFmペンタ・Cメジャー・Bbメジャーの3つでいいんだ。ちょっと安心した!

3つのキーを行き来する練習として、これほど良い教材はないぞい
余裕が出たらコードごとに

慣れてきたら次は何を意識すればいい?

II-Vの各コードを1個ずつ解像度を上げていくのじゃ。特にb5系コードとG7#5がこの曲の勘所じゃぞい
Aセクション(1〜8小節):Fm→C


Gm7b5はGロクリアン。難しければ「Fmペンタの音を弾きながらG音を意識する」だけでも十分機能するぞい。C7b9はb9(Db音)が命じゃから、コンディミ(HWディミニッシュ)かオルタードが合うのじゃ。Fm6は6th(D音)が入るからFドリアン、もっとFm感を出すならFメロディックマイナーもハマるぞい

後半のDm7b5→G7#5は?

Dm7b5はDロクリアン。b5(Ab音)を避けずにちゃんと鳴らすのがコツじゃのう。G7#5は元データの分析ではミクソリディアンが基本形とされておるんじゃが、#5の音(D#/Eb)はミクソリディアンに入っておらんからのう。#5をちゃんと鳴らしたいならオルタードかホールトーンが実用的なのじゃ。まずは「G7で B音とEb音の2つを通ってCに帰る」と簡略化してよいぞい。理由は単純で、この2音だけでG7#5の緊張と解決が表現できるからじゃのう

Cmaj7に着いたら普通のCメジャーでいい?

Cイオニアンで大丈夫じゃぞい。2小節あるから、直前の緊張を解いて「歌い切る」場所にするのじゃ
Bセクション(17〜24小節):Bb→Cへ帰還


Cm7はCドリアン、F7はFミクソリディアン、Bbmaj7はBbイオニアン。この3つは全部Bbメジャースケールと同じ音じゃから、実質Bbメジャー一発で通せるのじゃ

問題のAb7は?

元データの分析ではリディアンb7(Abリディアンb7)が第一候補じゃぞい。Ab7が2小節もあるから、Bbメジャーの世界からガラッと音色を変えるチャンスなのじゃ。難しければAb7のコードトーン(Ab・C・Eb・Gb)をなぞるだけでも景色は変わるぞい

最後のDm7b5→G7はAセクションと同じ考え方でいいの?

そうじゃのう。Dロクリアン→Gミクソリディアン(オルタードも可)で、次のAセクション頭のGm7b5に滑り込むのじゃ。ブリッジの出口は「Cに帰るII-V」じゃが、着地先はまたFmのII-Vじゃから、解決しすぎないフレーズで繋ぐのが粋じゃぞい
演奏時のポイント
イントロ: ラスト4小節(Dm7b5→G7#5→Cmaj7)を借りてテーマに入るのが手堅い形です。ピアノがルバートで冒頭のGm7b5→C7b9を匂わせてからインテンポに入るパターンもよく聴きます。
テンポとフィール: ♩=180〜220前後のミディアムアップで呼ばれることが多く、ジャムセッションではさらに速くなりがちです。速いテンポでもブロックの変わり目(Fm→C→Bb)を見失わないことが最優先です。
アウトロ: 最後のCmaj7を伸ばして終わるか、Dm7b5→G7のターンバックを繰り返してから締めるのが定番です。エンディングはアイコンタクトで合わせましょう。

テンポ速いと1〜2小節目でもう置いていかれそう…

だからこそ「Gm7b5→C7b9→Fm6は3つでワンセット」の暗記が効くのじゃ。1個ずつ読むのではなく、かたまりで見るのじゃぞい
実践で使えるTips
ソロの回し方: 32小節AABA、ソロは2〜3コーラスが標準です。テンポが速い日はワンコーラスでも十分に間が持ちます。迷子になったら「Aセクション前半はFmペンタ、それ以外はCメジャー系」と割り切って帰る場所を作りましょう。
Hot Houseとの関係: この曲と同じ進行を持つビバップ曲「Hot House」(Tadd Dameron作)がセッションでコールされることがあります。テーマは別物ですが、コーラスに入れば吹くことは同じです。この曲を仕込んでおけば2曲分のレパートリーになります。

1曲覚えたら2曲弾けるって、お得すぎない?

それがコントラファクトの旨味じゃのう。ビバップ期の曲には、こういう「進行は借り物」の曲がたくさんあるのじゃ
コール方法: 「What Is This Thing Called Love」でそのまま通じます。キーはほぼ100%Cです。速めのテンポ設定で呼ばれる前提で、まずは♩=160くらいから練習しておくと本番で慌てません。
名演・参考音源

最後に参考音源じゃぞい。この曲はビバップ〜ハードバップ期の名演の宝庫じゃから、選ぶのに苦労したのじゃ
Clifford Brown & Max Roach — At Basin Street (1956)
Clifford Brown(tp)とSonny Rollins(ts)のフロントによるハードバップの金字塔です。アップテンポでもフレーズが一切崩れないBrownieのソロは、この曲の「教科書」としてまず聴くべき演奏です。
Bill Evans Trio — Portrait in Jazz (1959)
Scott LaFaro(b)、Paul Motian(ds)とのトリオによる録音です。冒頭からドラムとの掛け合いで始まる構成が印象的で、Fm→C→Bbのキーの明暗をピアノの和声感で味わうならこの録音です。
Charlie Parker — Big Band (1952)
Joe Lipmanのアレンジによるビッグバンドをバックに、Parkerのアルトが自由に舞う録音です。テーマの合間を縫うオブリガートとソロの入り方は、この進行の上でビバップ語彙がどう機能するかの実例集になっています。

まずはClifford Brownから聴いてみる!

うむ、それがよいぞい。速いテンポでも歌心を失わない演奏とはどういうものか、体に染み込ませるのじゃ
関連曲ガイド
- Night and Day コード解析&セッションガイド — 同じCole Porter作品です。こちらもキーの重心が曖昧に始まる構造で、セットで学ぶとPorter流の和声感が掴めます。
- Cherokee コード解析&セッションガイド — アップテンポ定番の代表格です。速いテンポでII-Vを捌く練習として、この曲の次のステップに最適です。
まとめ

キーはCだけど、Aセクション前半はFマイナーのII-Vから始まる。「4小節ごとのブロックの色分け」で攻略、だね!

その通りじゃぞい。Fm→C→Bb→Cと世界が切り替わる曲じゃから、コードを1個ずつ追うより「今どのブロックか」を掴むのが先なのじゃ

まずはFmペンタ・Cメジャー・Bbメジャーの3つで通してみる!

うむ。それができたらDm7b5のb5や、G7#5の#5といった「翳りの音」を1個ずつ足していくのじゃ。…あとのう、この曲はHot Houseとセットで仕込んでおくと、ビバップ系のセッションで一目置かれるぞい

1粒で2度おいしい曲、練習してきます!


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