I Got Rhythm コード進行 解析&セッションガイド

博士〜!セッションで「リズムチェンジやろう」って言われたんだけど、何のこと?

おお、リズムチェンジか。ジャズやるなら避けて通れん曲じゃぞい。George Gershwinが1930年に書いた “I Got Rhythm” のコード進行のことでのう

ブルースと並ぶ定番って聞いたけど…

その通りなのじゃ。このコード進行を使って何百曲というコントラファクト(別メロディの曲)が作られておる。AnthropologyもOleoもThe ThemeもCottontailも、全部リズムチェンジじゃぞい
I Got Rhythm の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 曲名 | I Got Rhythm(アイ・ガット・リズム) |
| 作曲 | George Gershwin (1930) |
| キー | Bb |
| フォーム | AABA / 32小節 |
| テンポ | ♩=160–280 |
| フィール | Medium-Up Swing |
| セッション頻出度 | ★★★★★ |
| 難易度 | ★★☆☆☆ |

1930年にブロードウェイミュージカル『Girl Crazy』で初演された曲じゃぞい。Ethel Mermanが歌って大ヒットしたんじゃが、ジャズミュージシャンはすぐにこのコード進行を素材として使い始めたのじゃ

ミュージカルの曲がジャズの定番になったんだね

当時のオーケストラにはBenny GoodmanやGlenn Miller、Gene Krupaがいたそうじゃからのう。そりゃあジャズに取り込まれるのも自然な流れじゃぞい
I Got Rhythm のコード進行と分析

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Aセクション(1〜8小節)はI-VI-II-Vの循環進行が骨格です。Bb6→Gm7→Cm7→F7の4コード循環がリズムチェンジの核で、このパターンは体に叩き込む価値があります。
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5〜6小節目でサブドミナントエリアに入ります。Bb7はIV(Eb)へのセカンダリードミナントで、Eb7→Edim7は半音上行パッシングディミニッシュで、ベースラインがEb→E→F(Bb6/F)と滑らかに上昇します。

あれ、さっきまでの循環と急に雰囲気変わるね

そこがAセクションの「後半4小節」の役割でのう。前半は循環でぐるぐる回して、後半はサブドミナントに行って解決する。この構造はリズムチェンジ以外の曲にも使えるから、しっかり覚えておくんじゃぞい
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7小節目で解決、8小節目はターンアラウンドです。Bb6/Fでトニックに着地し、8小節目は1カッコ(Bb6→F7で頭に戻る)と2カッコ(Bb6で止まってブリッジへ)に分かれます。
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Bセクション(ブリッジ)はドミナント7thの連鎖です。D7→G7→C7→F7と完全4度ずつ下がるセカンダリードミナント連鎖(III7→VI7→II7→V7)で、各コードが次のコードのV7として機能します。

ブリッジ、全部ドミナント7thなの?

そうなのじゃ。D7がGに解決せずにG7になり、G7がCに解決せずにC7になり…と、解決を先送りにしながら下降していく。最後のF7でやっとBbキーのV7として解決するんじゃぞい

「解決を先送り」って面白い考え方だね

まさにそこがリズムチェンジのブリッジの肝なのじゃ。ドミナントが連鎖するからテンションが持続して、最後のAセクションに戻ったときにホッとする。この緊張と弛緩の対比がこの曲の魅力じゃぞい
- ラストAは最初のAと同じ構造です。8小節目はBb6に着地します。ソロ中は8小節目をCm7→F7にして頭に戻すのが普通です。
I Got Rhythm のスケールガイド

博士、コード進行はわかった!で、スケールは何を弾けばいいの?

リズムチェンジはコードが速く動くから、スケールを逐一切り替えるのは現実的ではないぞい

え、じゃあどうするの?

まずは2つだけ覚えれば曲全体を乗り切れるのじゃ
まずはこれだけ覚える

いいかい、AセクションはBbメジャースケール1発。ブリッジの各ドミナントはそれぞれのミクソリディアン。この2つの考え方で8割いけるぞい

Aセクションは本当にBbメジャーだけでいいの?コードこんなに動くのに

Aセクションのコードは全部Bbメジャーのダイアトニックなのじゃ。Bb6もGm7もCm7もF7も、全部Bbメジャースケールの音で構成されておる。だから1スケールで通しても外れる音がないぞい

あ、本当だ!

5〜6小節目のBb7 → Eb7 → Edim7のところだけ少し注意じゃが、最初はBbメジャーのまま突っ切って構わんぞい。大事故にはならん

ブリッジは?

ブリッジは各コードのミクソリディアンが基本じゃが、最初のうちはBbメジャーペンタトニックで乗り切るのもアリじゃぞい。Bbペンタの音(Bb – C – D – F – G)はどのコードの上でもそこまでぶつからんからのう

ペンタでいけるなら安心!

うむ。テンポが速い曲じゃから、まずは少ない音数で確実にリズムを刻むことが大事なのじゃ。スケールを増やすのはテンポについていけるようになってからでいいぞい
余裕が出たらコードごとに

Bbメジャー1発で通せるようになったら、次は何を覚えればいい?

よし、ではコードの動きに合わせてスケールを使い分ける方法を教えるぞい
Aセクション前半(1〜4小節):I-VI-II-V循環


循環部分はコードトーンを意識するのが一番効果的じゃぞい。Bb6の上ではBb – D – F – G、Gm7ではG – Bb – D – F、Cm7ではC – Eb – G – Bb、F7ではF – A – C – Ebと、コードトーンを順に繋いでいく練習が効くぞい

スケールじゃなくてコードトーンなの?

リズムチェンジは2拍ずつコードが変わるから、8音のスケールを駆け上がる時間がないのじゃ。コードトーンの3度と7度を拍頭に置いて、その間をスケールで埋める。それがバップ的なアプローチなんじゃぞい

なるほど、コードトーンが骨格でスケールが肉付けか

その通りじゃぞい。F7の上でA音(3度)やEb(b7)を狙えるようになったら、次のBb6への解決感が格段に増すぞい
Aセクション後半(5〜8小節):サブドミナントエリア


5小節目のBb7はBbミクソリディアンじゃぞい。A音がAb(b7)に変わるだけでのう

Eb7とEdim7のところは?

Eb7はEbミクソリディアン。Edim7はディミニッシュスケール(ホールハーフ)が使えるが、ここは1拍か2拍しかないから、コードトーンE – G – Bb – Dbを経過的に鳴らすだけで十分じゃぞい。あるいはBb7のまま突っ切ってもセッションでは誰も気にせんぞい

割り切りが大事なんだね

テンポ200超えの曲でEdim7のスケールをきっちり弾こうとしたら転ぶだけじゃからのう。プロでもここはコードトーンかクロマチックアプローチで処理しておる人が多いぞい
Bセクション(ブリッジ):ドミナント連鎖


ブリッジの各コードは素直にミクソリディアンを当てるのが基本じゃぞい。D7ならDミクソリディアン、G7ならGミクソリディアン、C7ならCミクソリディアン、F7ならFミクソリディアン

4つもスケール切り替えるの大変そう…

コツは「各ミクソリディアンの特徴音だけ意識する」ことじゃぞい。D7ならF#、G7ならB音、C7ならE音、F7ならA音。この特徴音(3度)さえ押さえれば、あとはBbメジャーに近い音で回せるのじゃ

3度だけ意識すればいいのか!

そうじゃぞい。余裕が出てきたらオルタードやコンディミも混ぜられるが、まずはミクソリディアンの3度を確実に。ブリッジでその音が出せるだけで「おっ、コードわかってるな」と思われるぞい
演奏時のポイント
イントロ: ラスト4小節をそのままイントロにするか、循環(Bb6→Gm7→Cm7→F7)を4小節弾いてテーマに入るパターンが一般的です。テンポが速い曲なので、イントロでテンポを明確に提示することが大事です。

イントロ、ラスト4小節をそのまま使えばいいんだ

リズムチェンジは凝ったイントロより、テンポを正確に出す方が100倍大事じゃぞい。特にアップテンポでやるときは、最初の4拍でテンポが決まるからのう
テンポとフィール: セッションでは♩=180〜220が多く、「リズムチェンジ」と言った時点でアップテンポが暗黙の前提です。♩=200以上を要求されることも珍しくなく、240〜280は上級者向けです。基本は4ビートスウィングですが、テーマは2ビート気味になることもあります。
アウトロ: ラストのBb6でリタルダンドして終わるのが最もシンプルです。| Bb6/F F7 | Bb6 |を繰り返してフェードアウト、またはユニゾンでキメてドラムのフィルで締めるパターンも定番です。
実践で使えるTips
ソロの回し方: テンポが速いためコーラス数は多くなりがちで、2〜4コーラスが一般的です。終わりたいコーラスのブリッジでフレーズを減らし、ラストAでテーマのモチーフを匂わせると周りが察してくれます。
Aセクションのバリエーション: ソロ中にAセクションをリハモナイズするのがリズムチェンジの醍醐味です。よくあるリハモとして、1〜2小節目をBbmaj7→Bdim7→Cm7→C#dim7に変えるクロマチック上行パターンがあります。ただし最初はオリジナルの循環が先です。

リハモって、元のコードを別のコードに置き換えるってこと?

そうじゃぞい。リズムチェンジは素材として使う曲じゃから、プレイヤーが自由にコードを変えてよいのじゃ。ただしピアニストやギタリストにリハモの内容を伝えずにやると事故るから、最初はオリジナル通りに弾くのが安全じゃぞい
コントラファクトとの関係: リズムチェンジのコード進行を使った曲は無数にあり、Anthropology、Oleo、Rhythm-a-ning、Cottontail、Lester Leaps Inなど全てコード進行が共通です。I Got Rhythmのソロ練習がそのまま活きます。
コール方法: 「リズムチェンジやりましょう」で通じます。キーは99% Bbです。テンポは「ミディアムアップで」「速めで」と添えましょう。コントラファクトをやりたい場合はテーマを知っているか確認してからコールするのが無難です。
名演・参考音源

最後に参考音源を紹介しておくぞい。リズムチェンジは弾く人によって全然違う景色になるからのう
Benny Goodman — Live at Carnegie Hall (1938)
歴史的カーネギーホールコンサートでの演奏です。テンポも程よく構造が聴き取りやすいので、原曲の雰囲気を知るならまずこれがおすすめです。
Charlie Parker — Anthropology (1946)
リズムチェンジのコントラファクトとして最も有名な1曲です。パーカーとGillespieのユニゾンテーマが炸裂するビバップの金字塔で、ブリッジでの8分音符の連なりはソロの教科書です。
Sonny Rollins — Oleo (1954)
Rollinsの代名詞です。Miles Davis Quintet録音で、テーマのシンプルさとソロの力強さの対比が見事です。テンポ♩=200前後はセッション頻出のテンポ帯です。

まずはBenny Goodmanの原曲から聴いてみる!

うむ。その後にAnthropologyとOleoを聴くと、同じコード進行がどう変化するかがわかって面白いぞい。3曲聴き比べるだけでリズムチェンジの奥深さが感じられるはずじゃ
関連曲ガイド
- Billie’s Bounce コード解析&セッションガイド — パーカーのバップブルースです。リズムチェンジと並ぶセッション必修曲です。
- Confirmation コード解析&セッションガイド — II-V連鎖がリズムチェンジのブリッジと共通する発想のバップスタンダードです。
まとめ

なるほど、I Got Rhythmって「コード進行そのものが財産」みたいな曲なんだね

そうなのじゃ。この32小節を体に入れれば、Anthropology、Oleo、Rhythm-a-ning…何十曲にも応用が効く。ジャズの基本インフラみたいなもんじゃぞい

AセクションはBbメジャー1発、ブリッジはミクソリディアンの3度を意識…と

うむ、まずはそれで十分じゃ。テンポについていけるようになったら、コードトーンを狙ってバップらしいラインを組み立てていくんじゃぞい

よし、まずはBbメジャースケールでテンポ180に挑戦する!

…その前に循環進行(I-VI-II-V)を全部の楽器で弾ける(歌える)ようにするのが先じゃぞい。コードが聴こえんうちにスケールだけ弾いても意味がないぞい

うっ…たしかに!

ほれ見ろ。まずはCm7 → F7 → Bb6のII-V-Iを耳で追えるようにするのが最優先じゃぞい


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