All Of You コード進行 解析&セッションガイド

博士〜!セッションで「All Of You」をやったんだけど、曲の頭から「あれ、今トニックじゃないの?」ってなって、いきなり迷子になっちゃったよ…

おお、コール・ポーターの名曲じゃのう。この曲はキーがE♭なのに、1小節目がA♭m6から始まるのじゃ。トニックで始まらないのがこの曲の看板じゃぞい

だからあんなに「甘いんだけど、ちょっと翳ってる」感じがするんだ!

そのとおりじゃぞい。今日はこのA♭m6の正体と、後半の半音下降のカラクリを一緒に見ていくのじゃ
All Of You の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 曲名 | All Of You(オール・オブ・ユー) |
| 作曲 | Cole Porter(1954年。1955年初演のミュージカル『Silk Stockings』で発表) |
| キー | E♭ |
| フォーム | ABAC(8小節×4=32小節) |
| 拍子 | 4/4 |
| フィール | ミディアム・スウィング |
| セッション頻出度 | ★★★☆☆ |
| 難易度 | ★★☆☆☆ |

ブロードウェイ生まれの曲じゃが、マイルス・デイヴィス、エラ・フィッツジェラルド、チェット・ベイカー、ビル・エヴァンスと、そうそうたる顔ぶれが録音しておるぞい

キーはE♭で覚えちゃっていいの?

うむ。インストのセッションではE♭が標準じゃから、まずはE♭で手に入れてしまうのがよいのじゃ
All Of You のコード進行と分析

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Aセクション(1〜8小節)はA♭m6→E♭maj7の往復で始まります。キーはE♭なのに、1小節目はIVm6のA♭m6です。いわゆるサブドミナントマイナーで、E♭メジャーにはないC♭(=B)の音を含むため、トニックに解決する前から甘く翳った響きがします。この「A♭m6→E♭maj7」の2小節が、この曲をこの曲たらしめているサウンドです。
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3〜4小節目はFm7♭5→B♭7のII-Vです。ただしIIが普通のFm7ではなくハーフディミニッシュ(m7♭5)で、ここにもC♭の音が入ってきます。A♭m6と同じ「翳り」を保ったままドミナントへ向かう形で、5〜8小節目はこの4小節をもう一度繰り返します。
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Bセクション(9〜16小節)の前半は、ベースの半音下降が主役です。E♭6/G→G♭o7→Fm7と、ベースがG→G♭→Fと半音ずつ降りてII-Vに合流します。真ん中のG♭o7はGとFをつなぐ経過ディミニッシュと捉えるのが分かりやすいですが、この小節の機能表記は資料によって揺れがあるところです。
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Bセクション後半(13〜14小節目)は、E♭maj7→D7→D♭7→C7の半音下降ドミナント連鎖です。1小節に2つずつコードが動く、この曲でいちばん忙しい場所です。連鎖の出口はC7で、そのままFm7→B♭7のII-Vに流れ込みます。
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A’セクション(17〜24小節)は前半6小節までAと同じで、7〜8小節目だけGm7→C7に変わります。III-VIの動きで、そのまま最後のCセクションへの助走になります。「2回目のAは着地が違う」ことだけ覚えておけば迷いません。
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Cセクション(25〜32小節)はA♭maj7から始まります。それまでマイナー(A♭m6)だったIVが、最後にきて明るいIVmaj7で登場するのが心憎いところです。続くAm7♭5→D7♭9はGm7へ向かうマイナーII-Vで、Gm7→C7→Fm7→B♭7→E♭6と、III-VI-II-V-Iの王道ルートで着地します。

同じ「IVの和音」でも、頭ではA♭m6、最後はA♭maj7なんだね

そこがポーターの職人芸じゃのう。冒頭で翳らせておいて、最後の最後で晴らすのじゃ。この対比を意識して弾くだけで、演奏の説得力が変わるぞい

いちばん事故りそうなのはどこ?

Bセクション後半のD7→D♭7→C7じゃぞい。1小節2コードで半音ずつ降りるから、ここだけは事前にゆっくり練習しておくのじゃ
All Of You のスケールガイド

博士、コードの種類が多くて、スケールを全部覚えられる気がしないよ…

安心せい。実はこの曲、大半はE♭メジャースケール1本で歩ける設計なのじゃ。まずは最小セットから整理するぞい
まずはこれだけ覚える

結論から言うと、E♭maj7・E♭6・Fm7・B♭7・Gm7・A♭maj7は全部E♭メジャーのダイアトニックじゃから、E♭メジャースケール1本で通せるのじゃ

じゃあ気をつけるのは、それ以外のコードだけ?

うむ。最重要はA♭m6じゃぞい。ここではC♭(=B)の音を出すのじゃ。E♭メジャーのCをうっかり伸ばすと、コードのC♭と半音でぶつかってしまうからのう

Fm7♭5のときはどうするの?

同じくC♭が効く音じゃぞい。♭5がまさにC♭じゃから、A♭m6と合わせて「Aセクションの奇数小節はCを♭させる」と覚えるとシンプルなのじゃ

Bセクションの忙しいD7→D♭7→C7は?

最初はスケールを追わんでよいのじゃ。各コードの3度と7度、つまりコードトーンだけを半音下降に乗せて拾えば、それだけでちゃんと聞こえるぞい

まずはE♭メジャー1本と、C♭の出し入れからだね!

それが最短ルートじゃぞい。細かいスケールの使い分けは、次の段階で仕込めばよいのじゃ
余裕が出たらコードごとに

慣れてきたら、次はどこを掘ればいい?

セクションごとに1つずつテーマを決めて掘るのがよいぞい。A・B・A’・Cの順に見ていくのじゃ
Aセクション(1〜8小節)


A♭m6の第一候補はA♭ドリアンじゃぞい。A♭・B♭・C♭・D♭・E♭・F・G♭で、m6の6度にあたるFが入っておるのがミソなのじゃ

もうちょっと洒落た響きにしたいときは?

A♭メロディックマイナーも候補じゃのう。ドリアンのG♭がGに変わるだけで、m6コードとの相性がさらに良くなるのじゃ

Fm7♭5はロクリアンでいいの?

うむ、Fロクリアンが基本じゃぞい。9度の音を明るくしたければロクリアン#2という手もあるが、まずは♭5のC♭を外さんことが先じゃのう

B♭7は普通のミクソリディアン?

基本はB♭ミクソリディアンでよいのじゃ。E♭maj7への解決を強くしたいときだけ、オルタードやHWディミニッシュで緊張を足すとよいぞい
Bセクション(9〜16小節)


E♭6/GはE♭アイオニアン、Fm7はFドリアン、B♭7はB♭ミクソリディアン。つまりE♭メジャーの音でつながる区間じゃぞい

真ん中のG♭o7が問題なんだよね。ディミニッシュって何を弾けばいいの?

ここはクロールした資料に明確なスケール指定がなくてのう、諸説あるところなのじゃ。定番はコードトーン(G♭・A・C・E♭)を素直に鳴らすか、ディミニッシュスケールで埋めるかの二択じゃぞい

後半のE♭maj7→D7→D♭7→C7は?

D7はリディアン♭7が第一候補じゃのう。D♭7とC7はそれぞれのミクソリディアンが基本じゃが、1小節2コードの速さじゃから、実戦では3度と7度の半音下降を拾うだけで十分なのじゃ

スケールを全部当てるより、ラインの下降を聞かせる場所なんだね

そういうことじゃぞい。ここは「スケールの場所」ではなく「クロマチックの場所」と割り切るのじゃ
A’セクション(17〜24小節)


前半6小節はAセクションとまったく同じじゃから、A♭ドリアンとE♭メジャーの往復でよいぞい

変わるのは7〜8小節目のGm7→C7だけだよね。ここは何を弾くの?

Gm7はGフリジアンが基本じゃのう。III度上のマイナーじゃから、実質はE♭メジャースケールと同じ音なのじゃ

じゃあ考えることは少ないんだ

うむ。勝負はC7じゃぞい。Cミクソリディアンが基本形で、次のCセクションへ向けて緊張を高めたければオルタードに持ち替えるのじゃ

「2回目のAは最後だけ違う」って、ソロ中も意識してないとダメだね

そこを聞かせられると「フォームが見えておるな」と一目置かれるぞい
Cセクション(25〜32小節)


頭のA♭maj7はA♭リディアンが第一候補じゃぞい。IVmaj7の上でDナチュラルを使う形で、実はE♭メジャースケールと同じ音なのじゃ

次のAm7♭5→D7♭9は急にコードが濃くなるね…

Gm7へ向かうマイナーII-Vじゃからのう。Am7♭5はAロクリアン、D7♭9は♭9の音が入るからDオルタードが手堅いのじゃ

そのあとは?

Gm7はフリジアン、C7はミクソリディアン、Fm7はドリアン、B♭7はミクソリディアンで、E♭6に着地じゃぞい。並べると仰々しいが、C7以外は全部E♭メジャーの音で歩けるのじゃ

最後の2小節がE♭6で伸びるのは?

次のコーラスへの折り返し地点じゃのう。ここでフレーズをきちんと終わらせて一呼吸置くと、ソロ全体が締まって聞こえるぞい
演奏時のポイント
テンポとフィール: クロールした資料に明確なテンポレンジの記載はなく、基準になるのはミディアム・スウィングというフィールです。マイルス・デイヴィスの1956年録音がセッションでの共通言語になっているので、あのくらいの落ち着いたミディアムを想定しておけばまず間違いありません。
キー: インストゥルメンタリストの間ではE♭メジャーで演奏されるのが最も一般的、と資料にも明記されています。セッションで急にキーを変えられる心配は少ない曲ですが、ヴォーカル入りの場合だけは事前にキーを確認しておきましょう。
イントロ: クロールした資料に定番の記載はありません。分かりやすいのは、ピアノが最後の4小節(Fm7→B♭7→E♭6)を弾いてテーマに入る形や、B♭7のペダルで数小節ヴァンプする形です。冒頭がA♭m6というトリッキーな曲なので、テーマの入り口がどこかをバンドで共有しておくと安心です。
アウトロ: こちらも資料に定番の記載はありません。最後のE♭6を素直に伸ばして終わるか、ラスト4小節をもう一度繰り返して終わる形が無難です。事前に「最後は2回繰り返しで」と一言決めておくとスムーズです。

テーマの頭がトニックじゃないから、イントロからテーマに入る瞬間が難しそう…

そこがこの曲の関門じゃのう。イントロの最後でB♭7をしっかり鳴らしてもらうと、次のA♭m6が「翳りの入口」としてきれいに聞こえるぞい
実践で使えるTips
ロスト対策: 目印は2つあります。1つ目はBセクションのG♭o7で、ベースが半音で降りる響きはこの曲でここだけです。2つ目はA’の7〜8小節目のGm7→C7で、これが聞こえたら「次は後半のCセクション」の合図です。逆に、A♭m6→E♭maj7の往復が聞こえたら頭に戻ったと考えて構いません。
練習の順番: まずAセクションの4小節(A♭m6→E♭maj7→Fm7♭5→B♭7)をループして、C♭の出し入れを体に入れるのがおすすめです。次にBセクション後半のD7→D♭7→C7を、3度と7度だけでゆっくりつなぐ練習をします。この2箇所さえ手に入れば、残りはE♭メジャー1本で歩ける曲です。
コール方法: 「オール・オブ・ユー」で通じます。同じくスタンダードの「All of Me」と聞き間違えられやすいので、コールのときは「ポーターの方の、オール・オブ・ユー」と添えると確実です。キーはE♭、フィールはミディアム・スウィングが基本形です。

たしかに「All of Me」と「All Of You」、口で言うとほぼ同じだ…

現場では定番の事故じゃからのう。1小節目を聴けばすぐ分かるがのう、走り出す前に確認するのが大人のセッション作法じゃぞい
名演・参考音源

参考音源じゃぞい。セッションの共通言語になっておるマイルス、ピアノトリオの金字塔ビル・エヴァンス、そして歌ものとしての原点エラ・フィッツジェラルドを選んだのじゃ
Miles Davis — ‘Round About Midnight (1957)
セッションでこの曲の「基準」になっている演奏です。Miles Davis(tp)、John Coltrane(ts)、Red Garland(p)、Paul Chambers(b)、Philly Joe Jones(ds)による1956年9月の録音で、コロムビア移籍第1作『’Round About Midnight』に収録されています。ミュートトランペットで歌われるテーマの佇まい、テンポ感、コーラスの回し方まで、まずこの演奏を聴き込んでから臨むのが最短ルートです。
Bill Evans Trio — Sunday at the Village Vanguard (1961)
Bill Evans(p)、Scott LaFaro(b)、Paul Motian(ds)による1961年6月25日、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音です。ベースが伴奏の枠を超えてピアノと対話する、インタープレイの教科書のような演奏で、この曲のハーモニーがどこまで自由に膨らむかを教えてくれます。この11日後にLaFaroが事故で亡くなったため、トリオ最後の記録にもなりました。
Ella Fitzgerald — Ella Fitzgerald Sings the Cole Porter Song Book (1956)
作曲者コール・ポーターの世界をまるごと味わえる、1956年のソングブック企画からの1曲です。Buddy Bregman指揮のオーケストラをバックに、メロディを崩しすぎずに歌い上げるエラの歌唱は、この曲の「原形」を知るのに最適です。インストの名演を聴く前に一度こちらを聴いておくと、テーマのメロディがどこにあるのかが立体的に見えてきます。

同じ曲なのに、マイルスとエラで温度が全然違うんだね

それがスタンダードの面白さじゃのう。歌の原形とインストの解釈、両方知っておくと自分のソロの引き出しが増えるのじゃぞい
関連曲ガイド
- Night and Day コード解析&セッションガイド — 同じコール・ポーター作品です。冒頭からトニックを外して聴かせる手口を聴き比べると、ポーターの作曲術が見えてきます。
- What Is This Thing Called Love コード解析&セッションガイド — こちらもポーター作。m7♭5を効かせたハーモニーのセットで練習するのにおすすめです。
- There Will Never Be Another You コード解析&セッションガイド — 同じE♭・ABAC形式のスタンダードです。フォームの地図がそのまま流用できます。
まとめ

キーはE♭のABAC32小節。頭はトニックじゃなくてA♭m6のサブドミナントマイナーで、C♭の出し入れが最初の関門。BセクションはベースのG→G♭→Fの半音下降と、D7→D♭7→C7のドミナント連鎖。整理すると覚えることは意外と少ないね

うむ、よいまとめじゃぞい。大半はE♭メジャー1本で歩ける曲じゃから、A♭m6のC♭と、Bセクションの半音の動きだけ丁寧に仕込めばよいのじゃ

迷子になったら、G♭o7の半音下降か、A’のGm7→C7を聴く!

そのとおりじゃのう。そして最後のA♭maj7で「翳りが晴れる」瞬間を味わえるようになったら、この曲はもうお前さんのものじゃぞい

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