All Blues コード進行 解析&セッションガイド

博士〜!セッションで「All Blues」がコールされたんだけど、ブルースなのに3拍子で、いつもの12小節の感覚が全然使えなかったよ…

おお、マイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』から生まれた名曲じゃのう。中身はGの12小節ブルースなんじゃが、3拍子で書かれておるから小節の数え方が変わるのじゃ

コード自体は難しくないの?

ほとんどG7一発じゃぞい。トラップは最後のターンアラウンドだけなのじゃ。今日はそこを重点的に見ていくぞい
All Blues の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 曲名 | All Blues(オール・ブルース) |
| 作曲 | Miles Davis(1959年、アルバム『Kind of Blue』) |
| キー | G |
| フォーム | 12小節ブルース(3/4表記で24小節) |
| 拍子 | 3/4(譜面によっては6/8で書かれることもある) |
| セッション頻出度 | ★★★☆☆ |
| 難易度 | ★★☆☆☆ |

1959年録音の『Kind of Blue』はジャズ史上もっとも売れたアルバムのひとつで、この曲はそのB面の看板じゃぞい

12小節ブルースなのに、譜面だと24小節あるのはどうして?

3拍子で書くと、ブルースの1小節が2小節分に引き伸ばされるからなのじゃ。譜面の2小節=ブルースの1小節と数えれば、いつもの12小節ブルースの地図がそのまま使えるぞい
All Blues のコード進行と分析

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前半8小節はG7一発です。ブルースでいう1〜4小節目に当たり、コードチェンジは一切ありません。原曲ではこの上でベースが例のリフを延々と繰り返し、その「変わらなさ」がこの曲の浮遊感を作っています。
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9〜12小節目でC7/G(IV7)に動きます。ブルースの5・6小節目に当たる場所で、普通のブルースどおりIV7へ行く形です。ただしベース側の表記はC7/Gで、ベースがGに留まったまま上のハーモニーだけがC7に変わるのがポイントです。リフを保ったままサウンドの色だけが濁る、この曲らしい瞬間です。
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13〜16小節目はG7に戻ります。ブルースの7・8小節目です。ここまでは「G7が長いブルース」と思っていれば迷いません。
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17〜20小節目がこの曲の看板、D7(#9)→E♭7(#9)→D7(#9)のターンアラウンドです。普通のブルースならV7→IV7と降りるところを、この曲はV7altから半音上の♭VI7altへ持ち上げてまたV7altに戻ります。クロールしたLearn Jazz Standardsの解説でも「V7→♭VI7→V7のターンアラウンドがこの曲のシグネチャー」と明記されている、いちばん耳に残る場所です。
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最後の21〜24小節目はG7で頭に帰ります。ブルースの11・12小節目に当たり、ここでまたベースリフに合流して次のコーラスへ進みます。

つまり覚えるコードって、G7・C7・D7(#9)・E♭7(#9)の4つだけ?

そのとおりじゃぞい。コードの数は少ないが、その分「今ブルースの何小節目にいるか」を見失うと戻る目印も少ないのじゃ。E♭7(#9)の響きが聞こえたら「もうすぐ頭」と覚えておくとよいぞい

D7(#9)の「#9」って、なんでわざわざ付いてるの?

#9のFはGのブルーノートと同じ音でのう。ドミナントの緊張感とブルースの泥臭さを1音で両立させておるのじゃ。原曲のあの「ザラッとした」響きの正体じゃぞい
All Blues のスケールガイド

博士、コードが4つしかないなら、スケールも簡単だよね?

基本はそうなんじゃが、コードが少ない曲ほど「1本のスケールをどう歌わせるか」が丸見えになるのじゃ。まずは最小セットから整理するぞい
まずはこれだけ覚える

結論から言うと、24小節中20小節はミクソリディアンで通せるのじゃ。G7はGミクソリディアン、C7/GはCミクソリディアン。しかもこの2本の違いはBがB♭に変わる1音だけじゃぞい

じゃあ注意するのは、ターンアラウンドの4小節だけ?

うむ。D7(#9)とE♭7(#9)のところじゃのう。ここはオルタード系の響きの場所じゃから、Gミクソリディアンのまま突っ込むとぶつかるのじゃ

最初の一歩は何をすればいい?

コードトーンを狙うのがいちばん確実じゃぞい。D7(#9)ではD・F#・C に #9のFを、E♭7(#9)ではE♭とD♭を。特にE♭7の小節でE♭を1音しっかり出すだけで、「あのターンアラウンド」の響きになるのじゃ

細かいスケールは後回しでいいんだね

よいのじゃ。この曲はコードチェンジを追う曲ではなく、少ない材料で歌う曲じゃからのう。まずはGミクソリディアン1本を、3拍子に乗せて気持ちよく歌えるようになることが先じゃぞい
余裕が出たらコードごとに

慣れてきたら、次はどこを掘ればいい?

前半のG7、中盤のC7/G、そしてターンアラウンドの3つに分けて見ていくぞい
前半のG7(1〜8小節)


基本はGミクソリディアンじゃぞい。G・A・B・C・D・E・Fで、F#ではなくFナチュラルなのがブルースたるゆえんじゃのう

8小節も同じスケールだと、途中でネタ切れになっちゃうんだけど…

音を増やすのではなく、リズムと休符で変化をつけるのじゃ。3拍子じゃから、2小節(6拍)をひとまとまりにしてフレーズを置くと、ベースリフと噛み合って気持ちよく聞こえるぞい

もっと外した響きが欲しくなったら?

データ上はオルタードやHWディミニッシュも候補に挙がっておるが、I7の上で常用するものではないのじゃ。次のコーラス頭へ向かう直前にちらっと混ぜる程度の隠し味と思っておくとよいぞい
中盤のC7/G(9〜16小節)


C7/GではCミクソリディアンじゃぞい。C・D・E・F・G・A・B♭で、Gミクソリディアンとの違いはBがB♭になる1音だけなのじゃ

1音しか違わないなら、弾き分ける意味ってあるの?

大ありじゃぞい。この4小節でB♭をはっきり出すと「IV7に動いた」ことがバンド全体に伝わるのじゃ。逆にBナチュラルを伸ばすとC7の3度E♭…ではなくEと半音でぶつかってのう、濁って聞こえるのじゃ

そのあとの13〜16小節は?

G7に戻るからBナチュラルに戻すのじゃ。B♭→Bの往復を意識するだけで、コード2つしかないこの区間がちゃんと立体的に聞こえるぞい
ターンアラウンド D7(#9)→E♭7(#9)(17〜24小節)


ここが本丸じゃぞい。D7(#9)はDオルタード、つまりE♭メロディックマイナーを7番目の音から弾くスケールが第一候補なのじゃ。D・E♭・F・F#・A♭・B♭・Cじゃのう

うわ、Gミクソリディアンと全然違う音ばっかり…

全部使おうとせんでよいぞい。まずは#9のFと♭9のE♭の2音を狙うのじゃ。データではHWディミニッシュも候補に挙がっておるが、どちらを選んでもこの2音は共通じゃからのう

E♭7(#9)はどうするの?

D7(#9)で使った形を、そのまま半音上に平行移動するのじゃ。E♭オルタードはEメロディックマイナー由来で、指の形は同じまま全部半音上がるだけじゃぞい。原曲のホーンもこの「同じ形の平行移動」で書かれておるから、理屈と響きが一致する場所なのじゃ

最後の4小節でG7に戻るところは?

Gミクソリディアンに帰るのじゃ。D7(#9)の緊張からG7の安心に着地する瞬間がこの曲のいちばんおいしいところじゃから、着地の音はG・B・Dあたりの分かりやすい音を選ぶとよいぞい
演奏時のポイント
イントロ: 原曲は例のベースリフのヴァンプから始まります。セッションでもベースにあのリフを出してもらい、ピアノ(原曲ではトレモロ)が重なってからテーマに入るのが分かりやすい形です。Learn Jazz Standardsの解説でも「シグネチャーのベースラインは原曲から正確に覚えるべき」とされているので、ベーシストはKind of Blue版のリフを一度コピーしておくと安心です。
テンポとフィール: クロールした資料に明確なテンポレンジの記載はなく、原曲のゆったりしたワルツ・フィールが基準になります。3/4で数えるか6/8で感じるかはバンド次第ですが、いずれにせよ1拍ずつ刻むより大きく2小節単位でうねる方が原曲の雰囲気に近づきます。
「普通のブルース」として扱いすぎない: Learn Jazz Standardsの解説には「ブルースとしてアプローチしても間違いではないが、原曲のバンドは典型的なブルースとしては演奏していない」とあります。バップのブルースのようにコードを細かく割っていくより、モードっぽく音数を絞って歌う方がこの曲らしくなります。まずは原曲の「佇まい」を耳に入れてから臨むのがおすすめです。
アウトロ: クロールした資料に定番の記載はありません。分かりやすいのは、テーマを吹き終えたあとベースリフのヴァンプに戻ってリタルダンド、またはフェードアウト風に音量を落として終わる形です。事前に「最後はヴァンプで」と一言決めておくと安心です。

3拍子のブルースって、ソロ中に何コーラス目か分からなくなりそう…

ターンアラウンドのE♭7(#9)が最高の道しるべなのじゃ。あの半音で持ち上がる響きが聞こえたら「この後G7で頭」と体に入れておけば、まず迷子にならんぞい
実践で使えるTips
ロスト対策: 目印は17〜20小節目のD7(#9)→E♭7(#9)→D7(#9)です。この曲で半音の動きが出るのはここだけなので、聞き逃しようがありません。逆に前半はG7が延々続くため、「譜面2小節=ブルース1小節」と数えながら、常に「今ブルースの何小節目か」を意識しておくのが安全です。
練習の順番: いきなり通すより、まずターンアラウンドの4小節だけをループして、D7(#9)とE♭7(#9)の平行移動を指に入れるのがおすすめです。次にC7/Gの4小節でB♭とBナチュラルの弾き分けを練習し、最後にG7の8小節で「音数を絞って歌う」練習をする。コードが少ない分、区間ごとの課題がはっきりしている曲です。
コール方法: 「オールブルース」で通じます。キーはGで固定と考えてよく、迷うのはテンポとフィールくらいです。原曲くらいのミディアムでやるのか、速めに飛ばすのかだけ最初に共有しておくとスムーズです。ベースにリフをお願いするかどうかも、イントロ前に目を合わせておきましょう。

セッションでこの曲が出たら、まず何を聴けばいい?

ベースじゃぞい。この曲はベースリフが土台じゃから、リフのどこが1拍目かを感じ取れれば、あとは自然に乗れるのじゃ
名演・参考音源

参考音源じゃぞい。すべての出発点である原曲、同じマイルスによる別解釈のライブ、そして現代のトリオによる快演を選んだのじゃ
Miles Davis — Kind of Blue (1959)
すべてはここからです。Miles Davis(tp)、Cannonball Adderley(as)、John Coltrane(ts)、Bill Evans(p)、Paul Chambers(b)、Jimmy Cobb(ds)による1959年4月の録音で、ベースリフ、ピアノのトレモロ、ホーンのハモリまで含めてこの曲の「原典」です。セッションで演奏する前に、まずこの演奏を何度も聴いてフィールを体に入れるのが最短ルートです。
Miles Davis — My Funny Valentine: In Concert (1964)
同じマイルスが5年後、Herbie Hancock(p)、Ron Carter(b)、Tony Williams(ds)、George Coleman(ts)のクインテットで演奏した1964年2月のライブ録音です。テンポもエネルギーも原曲とはまるで別物で、同じ曲がバンドと時代でここまで変わるのかと驚きます。「原曲どおり」だけがこの曲の正解ではないと教えてくれる演奏です。
Chick Corea — Trilogy 2 (2019)
Chick Corea(p)、Christian McBride(b)、Brian Blade(ds)によるライブ盤で、このAll Bluesのソロは2021年のグラミー賞(ベスト・インプロヴァイズド・ジャズ・ソロ)を受賞しています。ピアノトリオならではの自由なインタープレイで、ターンアラウンドの扱い方や3拍子の崩し方など、現代のセッションで使えるアイデアの宝庫です。

同じ曲なのに、1959年と1964年のマイルスで全然違うんだね

それがこの曲の懐の深さなのじゃ。コードが少ないからこそ、テンポとフィールの選び方が演奏の個性に直結するのじゃぞい
関連曲ガイド
- Billie’s Bounce コード解析&セッションガイド — 同じブルースでも、バップらしくコードを細かく割っていくタイプの曲です。All Bluesと聴き比べると、ブルースのアプローチの幅が見えてきます。
- Alice In Wonderland コード解析&セッションガイド — 同じ3拍子のスタンダードです。ジャズワルツの乗り方をセットで練習するのにおすすめです。
まとめ

中身はGの12小節ブルースで、譜面2小節=ブルース1小節。コードはG7・C7/G・D7(#9)・E♭7(#9)の4つだけ。スケールはミクソリディアン2本が軸で、ターンアラウンドだけオルタード系。整理するとすごくシンプルだね

うむ、完璧なまとめじゃぞい。C7/GではB♭、D7(#9)ではFとE♭、E♭7(#9)ではE♭とD♭。この「変わる音」だけ押さえれば、あとはGミクソリディアンを歌わせる勝負なのじゃ

迷子になったら、E♭7(#9)の半音で持ち上がる響きを聴く!

そのとおりじゃのう。そして何より、まずは『Kind of Blue』を聴き込むことじゃぞい。この曲はコードを覚える曲ではなく、あのフィールを共有する曲じゃからのう


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